20190627-001
 私は小さいころからよく幽霊を見る。BTSプロムポン駅ちかくのマンションに住んでたときの話。当たり前かも知れないけど、日本人の多く住んでるバンコクには、日本人の霊はいる。その部屋では以前から、視界の端に霊を見たり気配を感じたりしていた。

 ある日、廊下の方に気配を感じてふっと見ると、そこには女が立っていた。ぱっと見た感じは人間っぽいけど、肌が異常に白く、雨が降ってないのに全身ずぶ濡れだった。何より床がまったく濡れていないから、人間ではないことが分かった。その女は足が隠れるほどに長い虹色のロングワンピースを着ていた。腕には黄色と蛍光ピンクのゴム製のブレスレットを付けていて、爪にネイルしていた。髪の毛は茶色に染めたセミロング。顔は濡れた髪が張り付いて見えない。ファッションや雰囲気からして、20代の日本人旅行者だ。

 日本人の霊はその日から私につきまとうようなった。私がトイレに入ってるときにドアをノックして来たり、シャワーを浴びているときに背中を突っ付いてきたり、寝ているときの頭をなでてきたり、目の前に堂々と立っていたりと、とにかく存在をアピールしてくる。ベッドで寝ているとギシッっと音が鳴って誰もいないのにベッドが凹んだ。家族かなと思って起きてみると、女がこっちに背を向けて座っていた。びっくりして「え」と声を出すと、少しだけ振り返ってスッと姿を消したこともあった。最初はびっくりしていたけど、段々と慣れてきてその霊を見ても「あ、またか」と思うだけになったいた。

 私には霊感が少しだけある妹がいる。あるとき、妹が突然びっくりした顔で廊下の方をじっと見たまま固まっていた。どうやら妹もその霊を見たらしい。それから妹は霊を怖がってずっと私にくっ付いてくる。妹がうっとうしくなった私は、母に霊のことを話した。母は私の話を信じるところがバカにしてきたので、
(このババアもあの霊を見ればいいんだ)
と心の底から思った。そうしたら母も2、3日後にその霊を見たらしい。廊下の方をちらちら見て、
「あれ、あんたの友達? いつ連れてきたの?」
と私に聞いてきた。
「友達なんて来てないよ」
と答えるとキョトンとしていた。次の日に母はお寺に行った。そして引っ越しが決まった。

 霊感が強い時期と弱い時期があるが、その時期は比較的霊感が強い時期だった。この日本人の霊を見たことで霊感がさらに増し、引っ越し寸前で前回の話の霊を見るはめになったのだ。