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♀ 20代前半 バンコク出身バンコク在住

 私は以前、バンコク都内ラープラオ周辺のボロアパートに住んでいた。そのアパートは同じビルが4棟並ぶ、規模だけは大きい造りだった。

 C棟3階の私の部屋の窓から見える向かい側、B棟4階の部屋がどうも変だった。どう変なのかというと、住人がころころ入れ変わるのだ。新しい住人がやって来たと思えばすぐに引っ越してしまう。当時、引っ越していくばかりの住人の1人と仲が良かった、アパートの前でソムタムを売っているおばさんに話を聞いてみた。

 おばさんの話によると、その部屋はクローゼット付きらしい。そのクローゼットには開かない戸が付いていた。最初は開かないクローゼットを放置していた住人だったが、あるなら使おうと思ったある日、開かない戸をこじ開けた。すると引き出しから小さなアルバムが出てきたという。アルバムめくって見ると、写真に写っている人はもちろん知らない人ばかり。その中に女の人の写真が何枚かあった。

 その日からだ。夜になるとクローゼットから例の女の人が戸を開けて出てくるようになった。本当に見えているのか夢なのか分からないが、とにかく出てくる。ソムタムを売るおばさんの話を聞く限り、貞子のような雰囲気だ。怖さに耐えきれず住人が逃げていった。

 入居しては去っていく住人はみんな同じ女の人に遭遇しているのだろうか。棟向かいのそんな部屋を見続け、「今回は1週間もたなかった。ひょっとしたら日割りで借りていただけなのかな」なんて思うこともあったが、そのうち自分たちが引っ越すことになって、その部屋を定点観測する日々は終わった。

 それから何年か経った先日、ちょっとした用があってアパートに行ってみた。顔見知りの人が何人かいたので、例の部屋のことを聞いてみたら、最後は寺のお坊さんがやってきて供養し、以降は住民が長く住んでいるという話だった。部屋に何が取り憑いていたのかは分からないままだったという。