2018022-001

♂ 25歳 バンコク出身バンコク在住

 東北地方スリン県出身の妻と知り合ったころの話。スリンのカンボジア国境に近い妻の実家を訪問。4月の暑い時期で、実家の裏の田畑はカラカラに乾ききっていて、土ぼこりが舞うほどだった。

 実家や近所の子どもたちに連れられて、田んぼを散歩する。日中で日差しが強い。木陰を探すものの、田んぼなのでほとんどない。ちょっと離れたところに高さ7~8メートルほどの木を見つけた。

 そこに行こうと子どもたちに声をかけるが、「そこはダメ」と身振りで返してくる。子どもたちが話す言葉はクメール語でよく分からないが、「お化けが出る」と言っているようだった。とはいえ、暑い。「暑いから5分だけ座るよ」と言って木の方に向かったら、子どもたちは家に帰っていってしまった。

 座って数分。変な声というか音というか、聞こえてくる。田んぼは見渡す限り無人で、静まり返っている。その静寂の中で、「ウ~」というか「グ~」というか、そんな声というか音。

 牛? 牛も人間もいない。土の中のウシガエル? 土はカラカラで生き物がいるように見えない。木の枝がきしんでいる? 風など吹いていない。それは断続的に何分も続いていた。そんなに怖くはなかったが、子どもたちが言ったように離れた方が良いかと思い、実家に戻った。

 実家では大人たちがニヤニヤしていた。子どもたちが「あのおじさん、木に近づいていった」とか言ったのだろう。

「出たでしょ」。
と聞いてきたので、
「声だか音だかを聞いた」
と答える。
「ピー(お化け、幽霊)よ」
と言うので、ふっと不思議になって聞いてみた。
「何のピー?」
「う~ん、水牛かしらね」
「……」。